なぜ今、インドネシアの人材が選ばれるのか?
コロナ禍以前の約2.6倍という驚異的なペースで増え続けている
日本の人材課題を補う存在として、外国人労働者の存在感は増すばかりです。その中でも、特に勢いを持って急増しているのが「インドネシア」からの若者たちです。現在、日本で働く技能実習生の国籍別トップはベトナム(約40%)ですが、インドネシアは第2位(約26%)にまで上昇しています。実に、コロナ禍以前の約2.6倍という驚異的なペースで増え続けており、今後ますます日本の産業を支える重要なパートナーとなることが予想されます。
本コラムでは、インドネシア人材がなぜこれほどまでに日本を目指すのか、そして日本企業が彼らを受け入れる際に知っておくべき特徴や文化について、実際のインドネシア人材や受け入れ支援を行う専門家の生の声を交えながら詳しく解説します。

なぜ、多くのインドネシア人が日本に来るのか?
インドネシアの若者たちが日本を目指す背景には、現地の深刻な雇用問題と、日本に対する強い憧れがあります。
深刻な若者の就職難と産業の偏り
インドネシアは人口約2億8,000万人を擁する大国ですが、国内の雇用の受け皿が十分に足りていません。全体の失業率は4%台であるものの、15〜24歳の若年層の失業率は16〜17%と非常に高い水準にあります。普通高校や職業高校を卒業した「教育を受けた若者」の失業が全体の約半数を占めているというデータもあります。
実際に日本で働くインドネシア出身のアフィナ氏(西ジャワ州出身)は、次のように語っています。
「私の友人たちの間でも、特に地方では良い仕事がなかなか見つからないという声が多いです。地方には産業が少なく、仕事を得るためには都市部へ出るか、自ら産業を起こすか、あるいはバリ島のような観光業に頼るしかありません」
こうした事情から、優秀な若者ほど出稼ぎを熱望しており、日本だけでなくオーストラリア(ワーキングホリデーや準専門職)、台湾、マレーシアなどへも積極的に渡っています。日本の日本語学校へ通う若者たちは、「必死に頑張って日本へ行こう」という強い意欲を持っています。
世界トップクラスの「日本語学習熱」と親日感情
インドネシアは東南アジアでも有数の親日国であり、国別の日本語学習者数で中国に次ぐ世界第2位を誇ります。
「いつか日本で働きたい」と、現地の学校や送出機関で事前に日本語を熱心に勉強しているため、入国段階でのコミュニケーションが比較的スムーズな人材が多いのが強みです。
アフィナ氏も「日本はとても良い国で、インドネシアにいるよりも安心感がある」と語っており、一人で生活していても不安が少なく、日本の治安の良さや生活環境に高い満足度を示しています。また、若者の間では日本のアニメが非常に人気であり、アニメをきっかけに日本文化に興味を持ち、日本のカラオケを歌う若者がテレビのドキュメンタリーで取り上げられるほどの「日本語ブーム」が起きています。歴史的な背景(第二次世界大戦時のオランダ統治からの独立支援など)も影響し、日本に対して非常に良好なイメージが定着しているのです。
インドネシア人の多様な国民性と特徴
インドネシアは約17,000の島々からなる多民族国家です。「インドネシア人」と一括りにすることは難しく、出身地域や民族によって性格や気質が大きく異なります。それぞれの民族が独自の文化やプライドを持っています。
| 出身地域 / 民族 | 主な特徴・気質 |
| 西ジャワ州 (スンダ人) | 一般的に優しく、のんびりしていて明るく、楽天的な性格。スンダ人としてのプライドが高い傾向がある。 |
| スマトラ島 (バタク人など) | 自己主張がはっきりしており、声が大きくエネルギッシュ。商売熱心な人が多い。料理はスパイスの効いた辛いものを好む。 |
| 中部・東ジャワ州 (ジャワ人) | 勤勉で働く意欲が非常に高い。 |
| ジャカルタ (首都) | 都会的で、他の地方(バタヴィアなど)とは全く異なる洗練された雰囲気を持つ。 |
全体的な傾向としては、純朴で争い事を好まない温和な国民性です。笑顔が親しまれ、目上の人を敬う文化が根付いているため、日本の職場に馴染みやすいのが特徴です。また、タトゥー(刺青)を入れている人も少なく、日本の生活や仕事の現場において安心できるポイントとして高く評価されています。

日本企業が受け入れる際の留意点(宗教と文化の理解)
インドネシア人材をスムーズに受け入れ、長く定着してもらうためには、彼らの文化や宗教的背景を理解することが不可欠です。インドネシア国民の約87%はイスラム教徒(ムスリム)であり、戒律が厳格なため犯罪率が低いという安心感がある一方で、日常生活においていくつかの配慮が必要です。
1.礼拝(お祈り)の習慣敬虔な信者は1日に5〜6回の礼拝を行いますが、日本の職場環境において就業中の頻繁な礼拝が難しいことは、彼らも来日前に承知しています。可能な範囲で休憩時間を活用するなどの柔軟な対応が望まれます。
2.食事制限(ハラール)豚肉および豚肉のエキスが含まれる食品は一切食べません。神経質な人は食品の成分表示(裏ラベル)を徹底的にチェックします。社内イベントや食事の提供時には、この点への配慮が必須です。
3.ヒジャブ(イスラム教徒の女性が頭を覆う布)は、異性に必要以上の肌を見せないという戒律に基づくものです。着用する女性たちにとっては、「肌着をつけているのと同じ意味合い」を持つ重要なものです。

これらを「不便」と捉えるのではなく、異文化として企業側が理解し、互いに歩み寄る姿勢を示すことが、良好な信頼関係を築く鍵となります。
企業からの高い評価と、定着に向けた支援の工夫
多くの受け入れ企業から、インドネシア人材は「のんびりしたところがあるが非常に勤勉で愛嬌があるので親しみやすい」「全く問題なく、真面目に安定して働いてくれる」と、非常に堅実で高い評価を得ています。
特に「建設関係」で働く技能実習生の約4割はインドネシア人であり、国籍別でトップとなっています。次いで食品製造や機械・金属、農業分野でも受け入れが急増しています。
唯一の課題として挙げられるのが「日本語能力」ですが、これに対しても様々な支援の工夫がなされています。
•日本語学習のサポート: 支援組合では月に1回程度の日本語教室を開催するなど、継続的な学習機会を提供しています。
•専門的な学習ツールの活用: 外国人技能実習機構(OTIT)のウェブサイトには日本語教育教材「げんばのにほんご」という機械・金属関係などの職種別学習資料(インドネシア語対応)が公開されています。これを受け入れ企業側が周知し、日々の業務の中で活用を促すことが、実習生のレベルアップに極めて有効です。
2027年4月「育成就労制度」への移行を見据えて
2024年に法改正が行われ、従来の技能実習制度は2027年4月より「育成就労制度」へと新しい制度に変わります。新制度では「3年間で特定技能1号レベルまで育成する」ことが明確化され、一定の条件付きで「転籍(他社への転職)」も認められるようになります。
つまり、今後は「ただ労働力として雇う」のではなく、「インドネシアの若者から、働きたい場所として選ばれる職場環境づくり」が企業側に求められる時代に突入します。
健康で純朴な若者が豊富なインドネシアの人たちは、これからの日本の産業を支える重要な存在となるでしょう。他社に先駆けて優秀な人材を確保するために、今のうちからインドネシア人材の特徴を深く理解し、適切な採用ルートや受け入れ体制の整備を検討してみてはいかがでしょうか。

